リボン~もう1度君に、プロポーズ~

振り返って、私の名前を呼んだその人を見た。

「ああ…やっぱり、希里恵だ…」

その人は息子によく似た奥二重の目を潤ませて、懐かしそうに私の名前を呼んだ。

真っ直ぐな黒い髪も変わっていない。

「――周晴さん…?」

私はその人――乙國周晴(オトクニシュウセイ)さんを呟くように呼んだ。

「えっ…もしかして、取引先の人って周晴さんのことだったの…?」

そう思って聞いたら、
「そうだけど…希里恵は、『高崎エージェントシー』で働いているのか?」

周晴さんが聞き返してきた。

「働いているって言っても、契約社員としてなんだけど…」

私は呟くように、彼の質問に答えた。

「驚いたな…」

そう言った周晴さんに、
「私も…」

私は言い返した。