「あなたは、もっと幸せになれる場所があるはずだ…と僕は思った。

田渕さんを周子と同じ目にあわせて欲しくなかったから…」

「…ウソをついたんですか?」

そう言った私に、
「2人に、同じ思いをして欲しくなかった…。

周晴は僕と、田渕さんは周子と同じになって欲しくなかった…。

2人に幸せになってもらいたかったから、だから…」

乙國さんは声を震わせた。

「――それは、間違ってる」

そう言ったのは、お兄ちゃんだった。

「あんたは2人を守るための行動としてウソをついて別れさせたのかも知れないけれど、間違ってる」

お兄ちゃんは周晴さんに視線を向けると、
「雪穂を呼んでもいいか?」
と、言った。

「はい、どうぞ」

周晴さんが返事をしたのを確認すると、お兄ちゃんは電話をかけるためにリビングから離れた。

雪穂さんを呼んで、何をするんだろう?