「なんか色々あったみたいですけど
落ち着いたみたいで良かったですね」


放課後、図書委員の仕事で
一緒に本棚の入れ替え作業をしていた早川君が、不意にそんな事を言い出して


「?」

「矢橋先輩と伊崎先輩の件です」

「……こーくんと、すーちゃん?」

「俺、偶然居合わせたんです
あの2人がやりあってる場面に」

「えぇ!?」


動揺して
持ってた本が、手からするりと落ちていく

隣にいた早川君は
涼しい顔でそれを受け止めると

本棚に戻して、驚く私に視線を向けた



「まあ、何話してるのか
はっきりとは聞き取れなかったですけど
つむぎ先輩の名前が何度も出てたから
そっち関連かなって」


「……あ、あの、せ、先生とかには…」


冷静な早川君とは対照的に
私はとても焦っていた


すーちゃんはあの傷の事
自分の責任だからって
まわりには、うまく誤魔化してるみたいだけど…

いくらすーちゃんが納得しているとは言え
こーくんが暴力を振るった事は事実

それが先生に伝われば
こーくんはきっと
何かしらの罰を受けることになる



あれこれ考えて青ざめる私

思考は筒抜けだったんだろう
早川君は苦笑を浮かべた


「言ってないです
先輩達の問題でしょう?」


「……そっか。ありがとう」