トントン
「はい。」
「あ、あの…ゆうなです。」
緊張しすぎてあからさまに声が震えた。
「…ゆうなちゃん、おかえり。帰ってきてたんだね。」
いつもと変わらないように見えるその表情。
でもわたしは、昔のように“ゆうな”と呼び捨てで呼んでもらえないことに、少し寂しさを感じた。
「…どうかしたの?話があるんでしょ?中に入りなよ。」
「あ、はい…おじゃまします…」
わたしはおそるおそるひーくんの部屋に入る。
「ゆうなちゃん、お茶とかいる?」
「あ、ううん、特には大丈夫だよ。」
…なんとなく、ひーくんの顔を直視できない。
昔のひーくんに重ねて見てしまうんだ。
だからこそ、“ゆうなちゃん”って呼ばれると、少し胸が痛む。
どこか他人みたいで。



