「体力をつけたいって言う人にはこの仕事を勧めよう……」

そう言いながら、透はリビングへと入る。テーブルの上にはすでに朝ご飯が用意されていた。

「おはよう!お疲れ様〜」

スープをテーブルに並べながら、飯野美咲(いいのみさき)が言う。彼女も玲奈の助手だが、普段は看護師として働いている。

「おはよう。お腹ペコペコだ〜」

透が椅子に座ると、リビングに新聞を手に玲奈が入ってきた。「おかえり」と言われ、「ただいま」と透は答える。

朝のワイドショーを見ながら朝ご飯を食べる。玲奈と美咲は今日の予定について話していた。透はニュースをしっかり聞く。

「さて、次のニュースは五年前に起きた無差別殺人についてです」

ニュースキャスターの声に、玲奈と美咲も話をやめてテレビを見る。そして「こんな事件あったな」と玲奈が呟いた。

五年前、大通りを歩いていた人々を、一人の男性が刃物で次々と襲いかかった。何十人もの人が重軽症を負い、数人が命を落とした。