思いとは裏腹に鼓動はどんどん早く大きくなっていく。
「重くてすみません」
「命の重みだからな。軽いもんだよ」
どうしてこんなにも優しい言葉をくれるのだろう。私の存在は煩わしいはずでしょう?それなのに……。
「芹沢さーん、すみません、タクシー見つからなくて」
息を切らした安成さんが慌てて戻ってきた。そして三井先生の腕の中にいる私を見つけて目を丸くする。
「もうその必要はない。俺が病院まで連れていく」
「え? それは助かりますけど、でも」
「とにかく一刻を争うんでね」
「安成さん、すみません。ありがとうございました。また連絡しますね」
何がなんだかわからない様子の安成さんに、精いっぱいの笑顔を作る。たくさん迷惑をかけたから、また改めてお礼をしなければ。
「少し立っていられるか?」
三井先生は助手席のシートを倒し、目一杯後ろへと下げてから私の体を横たわらせた。
「つらくないか?」
「大丈夫です」
「乗り心地が悪かったら言ってくれ」
車内は真新しいレザーの匂いに包まれていた。乗り心地は抜群で触り心地もいい。
「すみません、シートに血が」
今も血はどんどん流れ、座席を汚していく。
「そんなこと気にしなくていいから。行くぞ」
三井先生はそう言ってハンドルを握った。その横顔が真剣で思わず見入りそうになる。



