秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています


「どうして黙っていなくなったりしたんだ」

「どうしてって、そんなの……決まってるじゃないですか」

「なんだ? はっきり言ってみろ」

怒っている?

逃げたりしたもの、当然よね。

忙しい合間を縫ってここへきたのかもしれない。

「俺がお腹の子の父親だからか?」

ドキンと、ひときわ大きく鼓動が鳴った。

「だから俺の前から姿を消したのか?」

「違い、ます」

そう声にするのが精いっぱいで、それ以上どう言えばいいのかもわからず体が震えた。こんな態度では強がっているのがバレてしまう。

ポコッポコッ。しっかりしなきゃだめだよって、そう言ってくれているのかな。お腹を撫でるともう一度強く蹴り返してきた。

「この子と三井先生は何も関係がありませんので。それでは失礼します」

これでいい。これでよかったんだわ。もうこれ以上気持ちを揺さぶられたくはない。

「何も関係がないって、納得できるはずないだろう?」

真実を打ち明ける方が困るのでは?

三井先生が何を考えているのかまったくわからず、困惑してしまう。いったい何をどう言えば納得してもらえるのだろう。

「急いでますので失礼します」

顔を見ず、目さえ合わさず、私は軽く会釈してその場を離れる。

安成さんは遠くから何も言わずに様子をうかがっていたようだ。