腕にさらに力が込められ、身動きができなくなる。全身が火照ってどうしようもないほどに熱い。ガチガチに固めた心が一瞬で溶けてしまいそうになる。
「三井、先生。お願いです、離してください」
「頼むから、話をさせてくれ」
すぐそばに感じる吐息が、寒さなのか緊張なのか、小刻みに震える三井先生の腕が、抵抗しようとする私の気力を奪っていく。
普段は余裕がある三井先生だが、見たこともないほど焦っているようだ。
こんなところまで追いかけてきてする話とは、いったいなんなのか。
もしかして私の妊娠を聞きつけて?
まさか美咲が話すとは思えないし、いったいどこから話が漏れたのだろう。
やめる時、前の職場のスタッフには一切事情を話していないというのに、どうしてここが?
それに三井先生には婚約者がいるのでしょう?
私との過ちをなかったことにして、幸せになっていると思っていた。
幸せになるために私との子供は邪魔だということ?
だとしたら、この子は私がなんとしてでも守らなければ。三井先生とは無関係なのだと主張する。
いけないとわかっているが、この子を守るためならなんだってしてみせるわ。
「話すことは、何もありません」



