「少し激しかったか。俺が行くから休んでいろ」

頭をポンッと撫でられたかと思うと、宏太さんが立ち上がった。

どうしてあんなに元気なのだろう。

体力があり余っているみたい。

熱はなかなか引かず、体の中でくすぶっている。

「ママー、ママー、ふぇーん」

廊下から海奈の声がして、私は慌ててバスローブを羽織った。

「やっぱり夜は杏奈じゃなきゃだめみたいだ」

海奈を抱っこした宏太さんが困り果てた顔で戻ってきた。

最近よちよち歩きを始めた海奈は、ますます目が離せなくなったけれど、その分可愛さも百倍増しだ。

「おいで、海奈」

両手を伸ばすと海奈は一目散に私の元へ。そんな海奈の小さな体をギュッと抱きしめる。

「海奈も俺と同じで杏奈が大好きなんだな」

「ま、またそんなセリフをさらっと」

宏太さんは前にも増してこんな風に私を惑わせる。

いつだって私ばかりがドキドキさせられて、ずるいなぁって。でも幸せだなぁって。

手に入らないと思っていた幸せが腕の中にある。

壊れないように大切にこれからも守っていこう。

宏太さんは海奈を抱く私を腕に閉じ込めた。

「宏太さんの心臓、すごく早く動いてる」

トクトクトクトクと一定のリズムを刻んでいるのが、そばに寄るだけでわかった。

「杏奈が近くにいるからな」

余裕があるように見えたけれど、違うのだろうか。思いがけないせりふに、再び私までドキドキし始める。

単純だなぁ、私って。

「だから杏奈も」

宏太さんはそんな私を見てフッと笑うと耳元に唇を寄せた。耳にかかる吐息に体が疼く。

「一生俺にだけドキドキしていろ」

そしてこれまでにないくらいの甘い声で囁くと、私の頬にそっと唇を押し付けた。














fin.