ピリピリッと張り詰めた空気が漂う。
「どんなって、ただの店主とお客さんだよ。それにしても芹沢さんの相手が宏兄だとは驚きだなぁ」
まるで少年にでも戻ったかのような無邪気な笑みを浮かべ、今にも踊り出しそうな安成さんは、どうやら相当テンションが上がっているようだ。
「店主と客、ね」
納得したのか、宏太さんはそれ以上の追求はしなかった。何かまずかったのだろうか。
それとも嫉妬?
いやいや、まさかね。
「二人を見てたら、僕も頑張ろうって気になってきました」
安成さんはそう言って寂しそうに笑い、決意を固めた瞳で私を見た。
「はい、応援しています」
「うまくいったら報告しますね。それではお邪魔しました」
「あ、はい。また落ち着いたらお店にも伺わせてください」
「ええ、ぜひお待ちしています。宏兄と一緒にきてください」
律儀に安成さんはペコリと頭を下げて病室を出て行った。
「ずいぶん親しいんだな」
「えっ、と?」
ん?
あれ?
やっぱり少し不機嫌だ。
「安成さんとはなんでもないですよ?」
「それに、あいつのことは名前で呼ぶんだな」
わかりやすいほどあからさまにムスッとして、じとっと私を見遣る。