翌日、午後の面会時間が始まると同時に三井先生が現れた。昨日と同じくストライプスーツにネタイをきっちり締めている。

どうやら宿泊するつもりできていたらしく、着替えなどの準備もしていたようだ。

ホテルなどないのに、どこに泊まったのだろう。

聞きたいことはたくさんあるけれど、出産翌日の体は思っていたよりもずっとボロボロで、さらには傷口の痛みもあってぐったりだった。

だが愛しい我が子の姿を見たらそれも吹き飛ぶのだけれど。

「杏奈に似て美人だな」

頬を人差し指で突くと、顔をクシャクシャにして手足を縮める。動きの一つ一つから目が離せない。

守ってあげたい愛しい存在。大好きな三井先生との赤ちゃん。

「そう、でしょうか? 三井先生に似ている気がします」

二人でコットの中の娘の顔を覗き込む。三井先生の顔は見たことがないくらいだらしなくゆるんで、私はそれを見て思わず笑ってしまった。

「なんだ」

「いいえ、そんなに優しい顔もするんですね」

こんな言い方、失礼だっただろうか。

まさか同じ気持ちでいてくれたとは思わなくて、話を聞かされた時は驚きを隠せなかった。

戸惑いはしたものの喜びの方が大きくて、三井先生のプロポーズを受け入れた。

本当に私でいいのだろうか。せめてもう少し釣り合うように努力をしなければ。

たった一日での急展開に頭が追いつかず、まるで夢でも見ているかのよう。

けれど目の前にいる三井先生は夢でも幻でもない本物だ。

「そういえば、どうしてここがわかったんですか?」