ラグジュアリーなスイートルームの一室で、目の前にいる極上の男性が微笑みを浮かべる。

「まだ緊張しているのか?」

「んっ」

「もっと楽に。俺に全部委ねて」

愛撫されるたび、ひんやりと冷たかったシーツに熱がこもり、全身が汗ばんでいくのがわかった。

余すところなく舌が這い、胸の敏感な部分を捉える。

「んっ」

ふわふわと宙に浮くような思考の中、強烈な快感に襲われ腰がビクンと反応してしまう。

「わかりやすいな、杏奈(あんな)は」

ひどく艶めかしい声が耳元に響いて、そっと吹きかかる吐息にも奥から熱があふれそうになる。

こんな単純な自分が嫌だ。

だけどこうなることを望んだのは私自身。

この行為に未来はないとわかっている。

だから期待はしない。

「俺のことだけ考えていろ」

だんだんと余裕がなくなっていく切羽詰まった声色。

「ああ……!」

熱いものに貫かれた瞬間、体の芯が火照って大きく腰が跳ね上がった。

甘く激しく押し寄せる快感の波に、細い糸一本で繋がっていた理性が飛んでしまいそう。

声が出そうになるのを耐えていると、柔らかな唇が降ってきた。

激しく打ちつける腰とはちがって優しいキスが落とされる。

こんな触れ方をしてずるいと思う私がいる反面、心は彼を求めてしまう。



たった一夜だけだから、どうか今だけは、甘い夢を見させて。