はじめての恋は、きみと一緒。

 菜々花に相談したかったけど、海乃ちゃんが敦瑠のことを好きって言っていいのかわからないから、なにも話せなかった。

 教室を出て行く菜々花を見送って、机の中から海乃ちゃんのメモ用紙を取り出す。

 やっぱり気が進まない……。

 でも渡さなかったら罪悪感でいっぱいになってしまうだろう。

 こんなこと引き受けなきゃよかった。

 あのとき、ちゃんと自分の気持ちを話して断っておけば……。

「沙耶、どうした?」

 ため息をついたときちょうど敦瑠がやってきて、わたしはさっとメモ用紙を制服のポケットへしまい、鞄を持って彼のもとへ向かった。

 下校する生徒で少し騒がしくて、すぐ近くに人がいるわけじゃないから、誰かに話を聞かれることはないだろう。

「あ、あのね、ちょっと渡したいものがあって……」

 廊下に出て敦瑠にそう話し出したけど、喉のあたりをもやもやしたものが貼り付くように邪魔をする。

 渡したくない思いと、渡さないと友達関係が悪くなってしまうんじゃないかという不安。

 敦瑠もこれを渡されたらどう思うだろう。

 黙り込んで考えるわたしに敦瑠は、「沙耶?」と首をかしげる。

 頭の中がこんがらがって、かすかに唇が震えた。

 渡したくないのに。

 不安が最高潮になったわたしは、ゆっくりとポケットからメモ用紙を取り出し、敦瑠に差し出した。

「なんだこれ?」

「えっとね、海乃ちゃん……五組の女の子が敦瑠のこと気になっているらしくて、その女の子の連絡先なんだけど、渡してほしいって頼まれた……」

 胸の奥が軋むように痛む。