黙っていると、敦瑠がわたしの頭をぽんっと撫でた。

「またなんか考えてるだろ?」

「えっと……」

「俺、沙耶が好きだよ」

 敦瑠の言葉にドキッとして、わたしは顔を上げた。

「今すぐ返事が欲しいとは言わない。なんかお前、すごい考えてるし。でも俺は、この前言った通り気持ちを隠さない。〝伝えておけばよかった〟なんて、後悔したくねぇから」

 まっすぐわたしを見つめながら、敦瑠は真剣な表情でそう言った。

 そんな彼の想いに心が惹かれる。

 わたしのことをそんなふうに想ってくれてうれしい。

 ぽうっと胸の奥が温かくなるのを感じていると、敦瑠が頬を緩めた。

「……じゃあ、また明日な。学校遅刻するなよ!」

「わ、わかってる! 敦瑠こそ寝坊しないようにね!」

 無邪気な笑顔を見せた敦瑠は、もう一度わたしの頭をぽんっと撫でて、軽く手を振り帰っていった。

 敦瑠は、本気で好きって伝えてくれていると感じる。

 わたしがいろいろと考えてしまうのは、敦瑠にたいしてマイナスな気持ちがあるからじゃない。

 好きっていう意味で特別な存在だって気づいたから、言葉や行動を悩んでしまう。

 このままだと、いつまでたっても進めない。

 ちゃんと彼の想いに返事をしたい。

 考えながらゆっくりと長く息を吐いて力を抜いた後、わたしは自分の家へと足を向けた。