「……なんか、くやしい!」

「なんでだよ」

「だって今の絶対、面白がってやったでしょ!?」

「違うって。まぁ、反応は面白いと思ったけど」

「ほら!」

 頬に触れた熱も、今手を繋いでいることも、全部に思考が追いついてくれなくて焦っていると、わたしの手を引く敦瑠が目を細めた。

「それなら本気でキスしていいのかよ」

 落ち着かない胸の鼓動が、さらに騒がしくなる。

 隣にいる敦瑠がわたしの気持ちを探るように見ている気がして、なんて答えたらいいのかわからなくなった。

 だって、わたし……。

「バカ。冗談だよ、今はな」

 困ったようにそう言った敦瑠は、わたしの頭をくしゃりと撫でた。

 冗談って……!

 真剣に考えちゃった自分が恥ずかしくて、頬が熱くなっていく。

 でも、敦瑠の表情が冗談っぽくはなかったように思えて、考えれば考えるほど心臓の音が全身に響いていく。

 バカは敦瑠だもん……。

 心の中でそんなことを呟くことしかできず、しばらく歩いてわたしの家の近くまでやってきた。

「お、送ってくれてありがとう」

 まだ動揺したまま、わたしは敦瑠にお礼を言う。

 頬はまだ熱くて、敦瑠の顔がまともに見られない。

 それでも〝また明日〟って言ったら帰っちゃうと思うと、その言葉もなかなか口に出せないなんて。