『とりあえず、沙耶はいつも通りでいるのがいいと思う! 気持ち伝えるのって勇気のいることだし、敦瑠くんもきっといろいろ考えているんじゃないかな。沙耶が避けたりしたら、気まずくなっちゃうし。敦瑠くんのこと、嫌じゃないんでしょう?』

「うん……。やっぱり普通でいるのが一番だよね」

 菜々花と話をして、少しだけ気持ちを整理することができたように思う。

 わたしは「ありがとう」と彼女にお礼を言って、明日の体育祭のことを話した後、電話を切って息をついた。

 スマホを握ったままテーブルにうつ伏せるようにして脱力すると、またすぐに敦瑠のことが頭に浮かんでくる。

 彼の真っ直ぐな瞳を思い出すと胸が高鳴って、夕飯までぼうっと過ごしてしまった。