「……あのね」

『なーに?』

「敦瑠に、好きって言われたの」

 頬が熱くなったのを感じて、わたしはぎゅっとスマホを握る手に力を入れた。

『えっ、告白されたの!?』

「う、うん。どうしよう、明日から敦瑠と顔合わせづらい……!」

『ちょっと待って、沙耶はなんて返事した?』

「ずっと友達だと思ってたって……。わたし動揺しちゃって、自分の中ではっきり答えが出せないでいたら、敦瑠にあきらめないって言われて」

 焦りながらもわたしは精一杯菜々花に伝える。

 明日から彼にどう接したらいいんだろう。

 平静でいるのは無理かもしれない。

『敦瑠くんはすごく沙耶のことが好きなんだね。そうじゃなきゃ、あきらめないって宣言しないよ!』

 電話の向こうの菜々花は興奮している様子。

『ふたりが付き合ったら、わたしもうれしいな』

「い、いや、急に言われたし、そんなこと考えてないよ!」

『考えてないのか……。あ、沙耶は気になる先輩がいるんだよね……』

 そう言われて、わたしは鳴川先輩のことを思い出した。敦瑠に告白されたのが衝撃的で、吹っ飛んでしまっていた。

 先輩のことは本人にたしかめてから、菜々花に話そう。

『好きって言われて、沙耶はどう思った?』

「び、びっくりしたよ」

『えーっ、それだけ?』

「……ドキドキもした。でも、友達として一緒にいる敦瑠が好きなのかなって。ああもう、考えれば考えるほどわからなくなっちゃう!」

 困っているわたしの心境を察したのか菜々花が『そっか』とうなづくような声を出した。