はじめての恋は、きみと一緒。

 困ったようにそう言った先輩をちらっと見て、心の中で安堵する。

 ちょっと不自然だったかな?

 でも、なんて言葉を返したらいいのかわからなかったんだもん。

 男の人に『かわいい』って直接言われたことなんて、ほとんどないから。

 平静を保つようにしながら、鳴川先輩と駅までいろいろな話をしていた。

 勉強の話や友達の話、よく聞く音楽や好きな芸能人など、先輩が上手く会話を作ってくれていた。

「沙耶ちゃんは彼氏いるの?」

「いません」

 聞かれたので自然に答えると、先輩は「そうなんだ」と言った後、小さく笑った。

「俺が沙耶ちゃんと同じクラスだったら、絶対放っておかないのになぁ」

「はい……!?」

 わたしが慌てて聞き返すと、鳴川先輩は「やっぱりかわいい反応するね」と面白がっているようだった。

「か、からかわないでください!」

「ごめん、ごめん」

 こういう冗談には困ってしまうけど、沈黙が続かないように話をしてくれて、気まずくならないようにしてくれる先輩は、やっぱりいい人なんだろうな。

 電車の方向が別なので、改札で「じゃあ、またね」と手を振ってくれた先輩にわたしは、小さく頭を下げながら「さようなら」と返した。

 そして、ホームへ下りる階段に向かう先輩の背中を眺める。

 学校から駅まであっという間だったな……。

「なにぼうっと突っ立ってるんだよ」

 すぐそばで声がして驚きながら振り向くと、どこか不機嫌そうな表情をしている敦瑠がうしろにいた。

「えっ!? あれ、今帰り?」

「バイトまで時間あるから、ちょうどいい電車の時間まで暇つぶしてた」

「そ、そっか」

 ふいに声をかけられたせいか、胸の鼓動が速い。べつにどぎまぎしなくてもいいのに。