はじめての恋は、きみと一緒。

　神山敦瑠《かみやま あつる》は、わたし、光島沙耶《みつしまさや》と同じ中学出身で、高校でも仲良くしている男の子。

　少しクセのついた茶色の髪と、着崩した制服。

　整った顔立ちで、笑顔が人懐っこい。

　そして明るい性格だから、敦瑠と一緒にいるといつも楽しかった。

　先輩、後輩からも慕われていて、かっこいいはずなんだけど……。

　好きな人の話や、誰かと付き合ったという話をわたしは聞いたことがなかった。

　周りの友達に彼女がいるのを敦瑠は〝うらやましい〟と言っていたこともあって、彼女がほしいとは思っているんだろうけど。

　もしかして敦瑠は、わたしと同じで好きな人が簡単にできないのかなって。それに、女の子の気持ちに疎い感じがするから、恋愛対象にはなりにくいのかも。

　そんなふうに思っていたのに……。

　普段はお調子者で、ムードメーカー。

　わたしにとって敦瑠は気を遣わない男友達だから、誰かに『好きです、付き合ってください！』なんて言われている場面を想像しづらかった。

　だからさっきは驚いて、動けないままになっちゃったんだと思う……。

　かっこいいけど恋とは無縁なタイプって勝手なイメージを持っていたけど、敦瑠だって女の子から告白されることはあるよね。

　並んで廊下を歩きながら、敦瑠の様子をうかがう。

　なんとなくぎこちない雰囲気を感じているのは、自分だけではないはず。

　さっきのことにはこれ以上触れないほうがいい？

　いつもの敦瑠なら『告白されてびっくりした！』とか、そういうことを自分から話しそうなのに。