もう誰もいないかな?

 確認する前に息をついた。

 まさか、告白している最中に通りかかっちゃうなんて、本当にびっくり。

 メッセージじゃなくて、ちゃんと相手を目の前にして伝えるのはすごいな。

 そう思いながら、同時に気まずさを感じていた。

 だって相手の男の子が――。

 聞いちゃったこと、後で正直に話そう。

 考えながら歩き出して階段を下りようとしたとき、わたしはふたたび足を止めた。

 もう誰もいないだろうと思っていたのに、踊り場にはまだ人が残っていた。

 わたしがよく知っている男の子。

 気づいた彼はスマホの画面から顔を上げて、わたしを見ながら首をかしげる。

「沙耶《さや》、昼休みなのにこんなところでなにしてんの? 飯食ったのか?」

「えっ、敦瑠《あつる》まだいたの!?」

 彼はなにごともなかったように話しかけてきたのに、わたしは焦ってしまった。

「ん? まだって……あ、もしかして……!」

 敦瑠は勘づいたみたい。

 しまった……!と心の中で思ったけど、もう手遅れ。

「さっきの、聞いてたのか?」

「ご、ごめんね。音楽室に忘れ物をして、取りにいった帰りに偶然聞いちゃって」

「……おい、気まずいんだけど」

 本当に、ごめんなさい。

 視線を逸らしてため息をついた敦瑠のもとへ肩をすぼめながら向かうと、わたしがたどり着いたタイミングで彼は動き出した。