はじめての恋は、きみと一緒。

 そう自分に言い聞かせながら、わたしに気づいた敦瑠に右手を軽く振った。すると彼は、わたしが隣まで来るのを待つ。

「沙耶、ひとり?」

「うん。菜々花は梶本くんと帰ったから」

「ああ、そうか。絢斗がふたりで帰るって話してたな」

「敦瑠は今日バイト?」

「休みだよ」

 敦瑠はチェーン展開している定食屋でバイトをしている。

 何度かわたしもお店に行ったけど、メニューが豊富でごはんはお代わり自由だから、たくさん食べたい学生や会社員の男性のお客さんが多いようだった。

 わたしは春休みまでコンビニでバイトをしていたけど、二年生になったらもう少し自分の時間を作って余裕を持ちたいな、なんて思って辞めてしまった。

 バイトがないと学校が終わったら慌てて帰らなくていいし、土日はゆっくり休めるからしばらくはこのままで。

 秋頃には、はじめようかな。

 そんなことを考えていた後、「そういえば」と敦瑠を見る。

「六月になったら体育祭だね。わたし、今年は実行委員になったんだ」

「ふうん。集まりとか大変そうだな」

 気遣うような表情の敦瑠に、わたしは微笑んだ。

「バイト辞めたから時間余ってるし、やってみたいなと思ったから。委員会は来週からあるんだって。体育祭楽しみ! 学年別のクラス対抗リレーや徒競走は気合入るし」

「それは俺も楽しみかも」

 話をしながら、自然に並んで廊下を歩けていることにほっとする。

 そのまま階段を下り、昇降口へ向かった。