はじめての恋は、きみと一緒。

 どうしてわたし、敦瑠のことを呼んだんだろう?

 近づいてから声をかければいいし、通り過ぎたっていいことなのに。

 笑っている女の子が気になった?

 わたし、なんで……。

「黒い物体って消しゴムか? まあいいや。これ、教科書返す。助かった、ありがとな」

「う、うん、はい」

「……なんか変? 大丈夫かよ」

 小さく笑った敦瑠は「じゃあな」と片手を上げてをひらひらとさせた後、教室へと戻っていった。

 わたしたちの会話が終わるのを待っていた菜々花と歩き出したけど、さっきの自分の行動が納得できなくてずっと考えてしまった。



「沙耶、わたし今日は絢斗《あやと》くんと一緒に帰ることになった!」

 一日の日課が終了して帰りの支度をしていたとき、菜々花がわたしの机までやってきて満面の笑みでそう言った。

 菜々花には梶本《かじもと》絢斗くんという彼氏がいて、ふたりは一年生のときから付き合っている。

 梶本くんは敦瑠と仲がいいから、菜々花とわたしの四人で出掛けることや、お昼ご飯を一緒に食べて過ごすこともある。

 恋をしている菜々花から話を聞くたびに、ドキドキしたり悩んだりするのは大変だなって思うけど、想い合っているふたりは幸せそう。

 だから、菜々花を見ているとわたしも恋をしたいなって思うんだよね。

「了解。菜々花、うれしそう」

「放課後、絢斗くんと一緒にいられるから」

「クラスが別だし、ふたりでゆっくり話せるのは放課後になるからね」

「うん、そうなの」

 頬を赤くしながら答える菜々花に、わたしの口もとが緩む。