敦瑠について気になることばかりが増えて、どうしたらいいのかわからない。
好きな人って誰? 隠さないでわたしに言ってみてよ!
……そうやって言えたらどんなに楽だろうか。
友達なのだから、こういう話を気軽にしたって別に変ではない。
それなのに深く聞けないのはなぜ?
体育が終わって菜々花と廊下を歩いている間、ぼうっとそんなことを考えていると、敦瑠が教室の前で女の子と話をしているのが視界に入った。
女の子は敦瑠と同じクラスだと思う。
なにを話しているのかはわからないけど、ふたりとも笑っている。
『明るくて、笑顔がかわいい子』
敦瑠が話していた好きな女の子の話を思い出したわたしは、急に焦りが沸きあがってきて咄嗟に「敦瑠!」と彼を呼んだ。
「沙耶?」
少し離れたところから名前を呼んだから、振り向いた敦瑠はどうしたのかと首をかしげている。
わたし自身もどうして呼んでしまったのか、ちょっと混乱して目をぱちぱちさせていた。
「え、えっと、あ……敦瑠の足もとに黒い物体が!」
「黒い物体? どこ?」
「……転がっていったような、いないような」
「なんだよ?」
頑張って誤魔化しているんだよ!
敦瑠の隣にたどり着くと同時に、女の子は敦瑠に笑いかけて自分のクラスの中へと入っていった。

