首を傾げる菜乃花に、クーガーは優しく微笑む。そして顎を持ち上げられた。

「俺と結婚しろ、菜乃花」



異世界にやってきたと思ったら王子に求婚され、菜乃花の頭はクラクラし始める。

「一体、何がどうなってるんだろう」

菜乃花は天蓋付きの豪華なベッドに横になる。自分のマンションに置かれているものより寝心地がいい。

あの後、菜乃花はクーガーの婚約者ということで豪華な部屋を与えられた。だがこれはクーガーが勝手に決めたことであって、菜乃花は結婚を承諾していない。

「顔はかっこいいよね……」

クーガーの顔を頭に浮かべ、菜乃花は呟く。あんなイケメンを元の世界で見たことがない。そんな彼からプロポーズをされてドキドキしていないわけではないのだがーーー。

「私、いつか元の世界に帰るのかな?」

元の世界に戻れるのなら、戻るべきなのかもしれない。仕事もあるし、家族だっている。今頃みんなに捜されているのかもしれない。そう思うと、菜乃花はベッドの上で横になっているのが申し訳なくなってきた。