「あなたは……」

整った顔立ちの男性を前にし、菜乃花の胸が高鳴る。男性は手に持っていたナイフをしまい、七日を見つめた。

「……見たことのない服だな」

「えっ?ただのスーツですよ?それより、ここはどこなんですか?あなたは一体……」

先ほどから男性と話がうまくできない。菜乃花は一番聞きたかったことを訊ねる。男性が驚いた顔をした。

「ここはプレフェール王国の王宮だ。そして俺はこの国の第一王子、クーガー・ジッキンベン」

「プレフェール王国?えっ!?王子!?」

聞いたことのない国名に、目の前にいるクーガーが王子だということに、菜乃花は戸惑う。その時、頭の中に昔小説で見た内容が浮かんだ。まさかと冷や汗が伝う。

「あの、信じていただけないかもしれませんが……」

「何だ?」

「私、全く知らない異世界にトリップしたみたいです……」

何言っているんだ、という目で見られるかと思い身構えていた菜乃花だったが、意外にも「そうか」とクーガーは冷静な目を向けていた。逆に菜乃花が驚いてしまう。