ツイてない女子は王子に求婚される！！

「クーガー様！！」

心配から、思わず菜乃花は声を上げてしまう。クーガーは菜乃花の方を向くと、大丈夫だと言うように笑った。ストーカーは面白くなさそうに剣をまた振り下ろす。

「余裕だね。今度はきちんと殺してあげるよ」

「それはこっちの台詞だ！！」

二人の戦いを見ていた菜乃花は、ふとあることに気付いた。灰色の空がグニャリと歪み始めている。あれが元の世界に続く穴だとすぐにわかった。

「クーガー様！！馬車の中に入ってください！！」

空を見上げ、クーガーもハッとした顔になる。ストーカーは「菜乃花ちゃん！」と馬車の方へ走った。それよりも早く、クーガーが動く。

馬車のドアを開け、先に入り込んできたのはクーガーだった。ドアを閉めた刹那、ストーカーが「卑怯だぞ！！」と怒鳴る。

グニャリと歪んだその穴が、まるでブラックホールのように土の一部や草を吸い込み始めた。ストーカーの姿も穴に吸い込まれていく。