ツイてない女子は王子に求婚される!!

ビュール湖は、この国で一番大きな湖だ。近くにはのどかな村がある。自然豊かで多くの観光客が訪れるのだとクーガーが言っていた。

「菜乃花を一度連れて行きたかったんだ」

今回の旅には、菜乃花とクーガー、そして馬車を運転する御者以外誰もついてきていない。警護はクーガー自身が剣術に長けているということと、御者も格闘技に優れているという理由からだ。

「二人きりの方が楽しめるしな」

菜乃花の手が優しく握られる。クーガーと目が合うと、彼は優しく微笑み、菜乃花に優しく触れた。菜乃花も心地よく目を細める。

この世界に来て、小さな不幸は起こらなくなった。むしろクーガーや王宮の人たちに大切にされ、街の人からも優しく声をかけられたりする。

「こっちの世界にいる方が、私には合っているのかもしれません」

そうポツリと呟くと、「本当か!?」とクーガーが嬉しそうな顔をして抱きついてくる。慌てて菜乃花は「結婚はまだ承諾していませんからね?」と付け足した。