好き、なんだよ。

「次はな、女子が絶対好きな場所」



その情報とこの時期でだいたい予想がついてしまいそうだが、オレは黙っておいた。



「そっか。じゃあ、楽しみにしてる」



そう言って笑って、オレの隣に並ぶ。


これを懐かしいって思い、


ふと左手がピクッとした。


寒そうに悴む手を、オレはかつて握ったことを思い出した。


小4くらいの時の帰り道。


その日は、先生達の車につららが出来るほどに冷え込んでいた。


それなのに、朽木はお決まりのうさぎのキャラクターの手袋を忘れてしまって、何度も両手を擦り合わせ、フーフーしていたのだ。


オレは何を思ったのか、ある瞬間その手を掴んだ。



「オレが温めてやる」



そう言ってぎゅっと握りしめ、ダウンジャケットのポケットに手を突っ込んだ。



「ありがと、玲音くん」



いちごのように真っ赤な頬をして、朽木はお礼を言った。


あの頃、オレに1番"ありがとう"を言ってくれていたのは朽木だった。


そのありがとうは魔法の言葉で、言われた後は、いつも心も体もぽかぽかしていた。


また思い出しちまった......。


オレに対して...ごめん。


傷つけるのが、益々怖くなった。


怖くしちまって、


ごめん。