好き、なんだよ。

数分後、彼が駆け足で戻ってきた。


今日だけは急がなくたっていいのにな。



「よっ、お待たせ」


「あっ...ブラックだ...」


「あれ?オレ間違ってた?」


「ううん。合ってる」


「だよな。お前、昔から甘いもん嫌いって公言してるもんな」



覚えててくれたんだ。


それだけで、もう十分だよ。


キュンとして痺れた手で蓋を開け、一口口に含む。


あぁ、懐かしい。


私の好きな味だ。


コーヒー独特の苦味と鼻に抜ける芳醇な香りを存分に楽しめるのは、やはり無糖なんだ。


最近は砂糖に侵されて味を忘れかけていたけど、思い出せて良かった。