異臭の中、汚い壁にもたれ、天井を見上げながらオレはあいつを思い出す。


朽木奈和。


オレは奈和が好きだった。


凡人のくせに、優しさだけは人一倍で、


オレが何度迷子になっても、


何度も何度も名前を呼んで探しに来てくれた。


見つからない時は最後までバスに乗らずに待っていてくれた。


オレの名前を呼んで、優しく抱き締めてくれたこともあった。


オレが見つかって良かったと安心してちょっと泣いたりするのが可愛かった。


中学が離れ離れになると分かってオレは卒業式にあいつに言った。


また、会おうなって。


その後の言葉は飲み込んでしまった。


また、会おうな。


次会った時は、


オレが奈和を幸せにするから。