好き、なんだよ。

「なおっ!!任せた!!」



......禁忌を犯す。


彼が呼んでいるのは私の名前なんかじゃない。


彼の“なお”は“夏音”なんだ。


間違って言ってしまっただけなんだ。


そう頭では理解してても名前を呼ばれたことが嬉しくて、私はニヤニヤしながら走ってしまった。


さいっこーの不審者顔だったと思う。


後ろから足音が近づいて来て、私は2人に呆気なく抜かされた。


離れないようにその背中を必死に追って、向こうで待っている樋口くんに繋ぐんだ。


私が今信じるのは、樋口くんだけだ。


今1番大切にしたいのは、


樋口くんなんだ。


このバトンは、


私を選んで、信じてくれた、


いや今も信じてくれている、


樋口くんに託そう。



「樋口くん!」



私は彼の名前を叫びながら、その右手に赤いバトンを渡したのだった。