好き、なんだよ。

「俺は朽木さんからバトンをもらいたい」



樋口くんの声ははっきりと教室中に響き渡った。


私は顔から本当に火が出るんじゃないかってくらいはずかしくなり、しゃがみこんで顔を隠した。


樋口くんも私に合わせてしゃがみ、私の顔を覗き込もうとする。



「朽木さん...俺と頑張ってもらえない?」



聞こえてくるざわめき。



「何?告白?」


「朽木さんに告白って......」



私は耳がいい。


勘もわりといい。


だから皆がどう思ってるのか分かる。


――なんで8秒女なんかが走るのよ。


――なんで樋口春樹に優しくされてんのよ。


――うざいんだよ。


本当なのか幻聴なのか分からない。


どちらであっても言われたり、思われたりするのは嫌だ。


女の嫉妬を浄化出来るほど、私のメンタルもタフじゃない。


だけど、私もそちら側になったことがあるから分かる。


そんな醜い感情を、


どろっどろで、


真っ黒なイカスミみたいな感情を、


持ってる方だって


投げつけないと、


吐き出さないと、


辛いってことを...。


仕方ない。


今回は、


今日だけは、


特別に私が全て引き受けよう。


これがせめてもの禊だと思って。



「走るよ。私が...走る」