好き、なんだよ。

「おいっ!おい、朽木!」



オレは朽木を大きく揺らした。



「う......ううん」


「バカ!こんなとこで寝てんじゃねえ!戻るぞ!」



本気で心配しちまったんだ。


すやすやと夢の中なんて、反則だ。


オレは踵を返す。


早く立ってくれよと思っていると、背中に言葉をかけられた。



「あり...がとう」


「は?」


「見つけてくれて...ありがとう」



ありがとうなんて言うなよ。



「うるせえ!な...いや、く、朽木が先に行ったんだからな!」


「えっ?」



感謝されるとは思わずにオレは取り乱してうっかり名前を言いかけた。


動揺を隠すべく早口で話し出す。



「あのばばあ教師が言ってた。さっき朽木さんに香西くんがいないって言っちゃったから探しに行ってくれちゃったのかも~って」


「どこに行ってたの?」



どこに、と言われても。


森の中で樋口に嫉妬して発狂してたなんて言えるかよ。



「お、オレは...ちょっと散歩してたんだよ。それを勝手に徘徊してるみたいに言いやがって。ちくしょー」


「ふふふふ...」



そして、笑う。


こんなに笑うやつだったっけ?


オレが忘れていただけで本当はこんな感じに笑っていたのかもしれない。


吊られて笑いそうになるが、平静を装う。



「お前なぁ、オレで笑うな!今までのことを考えたらな、ここに置いてきぼりにしたっていいんだぞ?!」


「でも、迎えに来てくれた」


「迎えに来たんじゃねえ。散歩のついでにふらふらーっとしたら、たあまたま木と木の間に朽木を見つけたってわけよ!お手柄だな、オレ」


「はっはっはっはっは...」



全身の痛みも疲労もすっ飛んだ。


こんだけ笑われては笑うしかねえじゃん。


オレも少し笑ったが、朽木には及ばなかった。


そういえば、去年の合唱コンクールでオレが一生懸命指揮をやってる時も間奏に入ると笑ってたな。



「玲音くんが指揮者とか、キャラじゃない」



とかなんとか言って。


今思えばあの時も性格の悪さが滲み出ていた。