「あっ...」



思わず声をあげてしまった。


目に飛び込んできたのは忘れもしない、あの人の名前だった。


私はバッグの持ち手をぎゅうっと握りしめ、階段に足をかけた。


一歩二歩...と歩みを進める。


足が錘をつけたみたいに重くて少しふらつきながら足を交互に出す。


...絶対離れたいって思ったのに。


運命とか、縁だとかそんなの今は信じたくない。


どうして、


どうして、


どうして...


忘れさせてくれないの。