読めないあなたに小説を。




「お前はいつもベッドに寝てて、魘されてた。
 顔色は悪いし、結構重症に見えたもんやから、
 松村に聞いたんだ。
 こいつ、どっか悪いの?って」


過去の忌々しい記憶に苛まれて、
随分と悪夢を見ていた。


みんなが私のことを噂している気がしていたし、
この世の中には敵しかいないと思い込んでいた。


それを、恵弥くんは見ていたんだ。


「そしたら松村が、もし関わることがあったら
 助けてあげてねって言ったんだ」


「松村先生が?」


恵弥くんがゆっくり頷く。
天使のような松村先生の笑顔が浮かんだ。


そんなことを言っていたなんて知らなかった。
全然知らない子に、何を言い出すのよ先生。


でも、その言葉を律儀に守ってくれたんだ。


恵弥くんはいろんなところで私を助けてくれた。
お父さんの言葉と先生の言葉で、
彼は私に手を差し伸べてくれていたんだ。


「最初は、なんやこいつって思った。
 そんなに苦しいなら休めばええやろって。
 でも、次の日もその次の日もお前は来てて、
 こいつもこいつで、頑張っとんのやろなって思うようになった。
 

 魘されて顔を歪めるお前を見ているのがだんだん辛くなって、
 気付くと俺はベッドの傍まで近づいてた。
 青白い頬に無意識に触れた時、お前、笑ったから。
 その顔が、なんていうか、かわいくて」