「ごめんね、朱莉ちゃん。大丈夫?」
勢いよく扉が開いて、松村先生が入ってきた。
びっくりして思わず恵弥くんから離れようとするけれど、
恵弥くんは私の肩を抱き寄せて離さない。
松村先生が目を見開いて私たちを見ていた。
「須藤くん?どうしたの、あなた」
別に変なことをしていたわけじゃないのに、
なんとなく後ろめたくなる。
私はこんなに動揺しているのに、
恵弥くんは眉一つ動かさない。
「こいつ、具合悪いから早退。俺が送るわ」
「えっ、ちょっ……恵弥くん」
戸惑う私をよそに、恵弥くんは自分と私の荷物を持って手を引いた。
松村先生は驚いていたけれど、
優しい笑みを浮かべて「お願いね」と手を振っていた。
引かれるがままに、私は校舎の外へ出た。
恵弥くんは校門前で止まると、
スマホをいじりだした。
「あの……どうして……」
「俺、実はお前がなんか抱えてんの、知っとった」
えっ?と目だけで彼に問う。
すると恵弥くんは空を仰ぎ見ながら続けた。
「去年の10月。父ちゃんが死んでから
すぐに再婚した母ちゃんと、西から親父の住むこの街に越してきて、
この学校に転入した。
保健室でいつもサボっとって、そんときにお前を見つけた」
去年はほぼ毎日保健室登校をしていたから、
遭遇してもおかしくない。
新学期で同じクラスになったあの日が初対面だと思っていたけれど、
違ったんだ。


