読めないあなたに小説を。




勢いよく起き上がって、恵弥くんの手を振り払う。
沸々と怒りが込み上げてきたけれど、
これはただの八つ当たりだって分かっている。
それでも、止められなかった。




「恵弥くんに私の何が分かるって言うの?
 なんでも持ってて辛いことなんか何一つない、
 自由な恵弥くんと私は違うんだよ!」




涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃな顔で恵弥くんを見る。
恵弥くんは険しい顔で私を見つめていた。


その時、ヒラリと何かが音を立てて床に落ちた。
あっと思う間もなく、恵弥くんがそれを拾い上げた。


それまで興奮状態だった私も
さっと血の気が引いていく。


「なん?これ……」











―バレた。












しばらく沈黙だけが私たちを包んでいた。
その間も息苦しさは変わらなくて、
恵弥くんがいるのも構わずに膝を抱えて喘いでいた。


時計の音が聞こえる。
恵弥くんはベッドの脇にしゃがみ込んだまま。


何をしているのかなんて気にする余裕もなく、
ただ時が過ぎて恵弥くんがいなくなるのだけを待った。


私の診断書を見たのなら、
統合失調症だということも分かるし、
精神科の診断書だからそれが精神病だということも
分かってしまったはずだ。


恵弥くんは、きっと呆れた。
面倒くさいと思われた。
嫌われてしまったんだ。


亜依ちゃんたちにも嫌われて、
これでこの学校に私が話せる友達がいなくなったんだ。


悲しいと思うけれど、恵弥くんが前に言っていた
「期待しない」という言葉を思い出した。


恵弥くんが離れていかないというような
バカげた期待はしないでおく。


どうせ、離れていく。
そう思った方がいくらかマシ。