読めないあなたに小説を。




「朱莉ちゃん、ちょっとここ空けるわね。
 大丈夫?」


声を出すことも出来なくて頷くと、
先生は静かに部屋を出て行った。


ひとりきり。
なのに全然落ち着かない。


今日は発作止めの頓服薬を持っていないのに。
どうすればいいか分からなくて、ただ喘ぐばかり。


ホームルームが終わりを告げるチャイムが耳に届く。
また、保健室登校だ。
自分が嫌になる。
私は、何も変わっていない。


……こんな自分、大嫌い。
いっそのこと、息が止まってしまえば楽になれるのに。


手を握りしめて唇を噛みしめると、
ガラッと扉が開いた音がした。


誰かが来た恐怖で体が震える。
布団をぎゅっとかぶって息を潜めたいのに、
喘ぐ私は息を殺せない。


シャッとカーテンが開いた。
お願い、寝ているからどこかに行って……。


「おい」


低い声が降ってきた。
それが恵弥くんのものだと分かる。


恵弥くんは布団を優しく取り払った。


「紫月。どうした」


「……なんでもない」


「嘘つけ。なんかあったやろ」


「……」


「紫月」


「ほっといてよっ!」