読めないあなたに小説を。




送信ボタンを押して、天井を見上げた。
恵弥くんの、「またな」という声が響いてくる。


当たり前に会うかのような口約束だった。
クラスメートだから、明日も会うことは確実なんだけど。
でも、またって言ってくれたのが嬉しかった。


いつもは挨拶をしても返してくれなかったりするのに、
今日は返してくれた。
しかも、微笑んでくれた。


それは、彼にとって私は、
前と違った存在になっているということなのかな。


都合のいいように解釈してしまう自分が情けないけれど、
そうだと思いたい。




程なくして返事が返ってきた。


【ありがとうございます。そうですか!
 やっぱり、その彼の真実は
 僕の思う通りだったのかもしれませんね。


 新作、楽しみです。
 彼の真実が分からないということですが、
 僕は優しい面を信じてもいいと思います。
 冷たかったりするのは、きっと彼が不器用なだけです。
 知った優しさを、大事にしてあげてください。
 それを信じていれば、もっと彼が好きになるはずです】


優しい面を、信じる。
ポケットから恵弥くんの鉛筆を取り出して眺めた。


つい持ってきてしまったけれど、
こうして見ると本当に彼は優しい。


これだけじゃない。


私の体調を心配してくれたり、
助けてくれたりする。


そういう彼を、信じてもいいの?


机に置いてあった恵弥くんの帽子を手に取る。
「須藤恵弥」の文字を指でなぞって、
それからかぶってみた。


少し大きいそれは、すっぽりと私の頭を包む。
視界が暗くなって、世界が変わる。
また胸が、きゅーん、と鳴った。