読めないあなたに小説を。




すぐに見様見真似で創作小説を書いてみた。


私が書いたのは青春小説で、
いじめに悩む友達を主人公が救ってあげるお話だった。


それは真美ちゃんのことを思って書いた小説で、
あの時の過ちによりバッドエンドとなってしまった現実を、
ハッピーエンドに変えた。


初めて書いた小説が完成した時、達成感に溢れた。
そして、真美ちゃんの死と初めてちゃんと向き合えた気がした。


嬉しくてお母さんに読んでもらうと、
お母さんはすぐにそれを真美ちゃんのお母さんに見せた。


真美ちゃんのお母さんはそれを読んで涙を流し、
「ありがとう」と何度もお礼を言ってくれた。


私はあの時の罪を告白し、
真美ちゃんのお母さんに謝ったけれど、
真美ちゃんのお母さんは言った。


『朱莉ちゃんの言葉で真美は傷付いたかもしれないけれど、
 朱莉ちゃんの言葉で、私は救われたわ』


お母さんから聞いたのだけれど、
あの時真美ちゃんのお母さんは、
真美ちゃんの死から立ち直れずに
後追いを決意していたのだそうだ。


それを私の小説が止めた。


私は、人を救ったのだ。


そう気付いた時、思った。


言葉は人を傷つけるナイフのようなものだけれど、
人を救う瞬間もある。


それなら私は、その後者の言葉を紡いでいきたい。
それが出来るのは、この小説の中だけなのだ、と。