読めないあなたに小説を。




「やっほー」


小さいけれどよく通る声で、
亜依ちゃんが部屋の中に入っていった。


その後に桜ちゃんと加奈ちゃんが続く。


私も恐る恐る部屋の中に入って扉を閉めた。


男子たちはびっくりしたように起き上がって、
私たちを歓迎してくれた。


ただ1人、ベッドから出てこない。
これは誰だろう。
もう眠ってしまっているのかな。


「恵弥は?寝てんの?」


亜依ちゃんが聞いた。
嘘、ここ、恵弥くんの部屋だったの?


「ああ、もう寝てるよ。ソッコーで寝やがった」


純也くんが呆れたように言う。
その隣に加賀くん、工藤くんがいた。


3人は私たちを囲むと、わいわい話し始めた。


な、なんだか、青春って感じがする。
夜中に男の子と同じ部屋にいるなんて、
大人の階段を上ったみたい。


「なぁ、櫻田は人気投票のかっこいい人、
 誰に入れたん?」


工藤くんが聞く。
亜依ちゃんはちらりと恵弥くんの寝ているベッドに目をやって、
もじもじしながら答えた。


「秘密」


「なんだよ、教えろよー。もしかして、俺?」


「それは絶対ない」


「はは、振られたな」


「馬鹿。言うなって」


工藤くんは亜依ちゃんが好きなんだ。


みんな恋をしている。
私も、してみたいな。
上手くいってもいかなくても、
好きな人がいるだけで人生変わりそう。


「紫月さんは?好きな奴とかいんの?」


加賀くんに問われて、私は固まった。
なんで私?


加賀くんを見ると、目が合う。
じっと私を見つめる加賀くん。
もしかして、私に1票入れたのって、加賀くん?


「あっ、私――」


「しっ。先生来たみたいだぞ!」