読めないあなたに小説を。




消灯の時間になっても、
私たちはベッドから顔を覗かせて
みんなで喋っていた。


話題は好きな人の話になる。


好きな人がいない私は、
話を聞くだけだったけれど、楽しかった。


「それでね、喋ってると、
 ここんとこがきゅーんとなるの」


「分かるー。好きな人のためなら、
 なんだって乗り越えられるよね」


「そ、そうだね。分かるー」


私も一応話に混ざって相槌を打ってみる。
本当は何も分かっていないけど。


亜依ちゃんが「ここんとこ」と言った
胸の辺りを押さえてみる。


ここが、きゅーん……。


「ねぇ、男子の部屋、遊びに行かない?」


「いいね!合宿の醍醐味ってやつ?」


「朱莉ちゃんも行こ!」


「えっ、あの……」


遊びに行くって、いいのかな。
先生に怒られるんじゃ……。


でもここで乗らないと嫌われちゃう。
愛想笑いを返して、私も頷いてみせた。


どこに行くのかなと、みんなの背を追う。
先生の見回りをかいくぐってたどり着いた先は、
突き当りの部屋だった。