読めないあなたに小説を。




「お前のそばには誰がおんねん」


「え、えっ?」


「これでも、お前は平気なんか?」


耳元で恵弥くんが囁く。


訳が分からなくてただ体を硬くして、
聞いているしかなかった。


これでもって、どれでも?
平気って何?
私はなんて応えればいいの?




何も言えないでいると、恵弥くんがはぁ、とため息をついた。
そのまま体の力を抜いて、私を離す。


びっくりするくらい温かかったけれど、
冬でもないのに離れた瞬間寒さを感じた。


「恵弥くん、どうしたの?私……」


「なんも。野菜、全部終わったら持ってこいよ」


そのままスタスタと歩いて行ってしまう恵弥くんを見つめる。
心臓がドクドクいっていて落ち着かなかった。


初めて、男の人に抱きしめられた。
それも、恵弥くんに。


どこか苦手なはずなのに、
不思議と嫌ではなくて。


どうしてこんなに胸が鳴るのか分からなかった。


ただ、抱きしめられた感触だけが妙に残っていて、
震える手で自分の両腕をそっと抱きしめた。