読めないあなたに小説を。




「ねぇ、恵弥くん」


「ん」


「恵弥くんって、好きな人、いるの?」


「あ?」


手を止めて、恵弥くんは私を見た。
やる気のない目に光が宿る。
お前は一体何を言い出すんだ?と問われているみたい。
聞いちゃまずかったかな?


「う、噂で恵弥くんに好きな人がいるって聞いたから、
 誰なんだろうなぁって思って」


「なんやそれ。しょうもな」


作業を再開する恵弥くん。


目の前の彼を見つめると、耳が赤くなっている。
この反応は、絶対に好きな人がいる。
一体誰なんだろう。


「ねぇ、いるの?」


「……いるって言ったら?」


「だ、誰なの?」


また手を止めて、恵弥くんは私をじっと見つめた。
耳がぴくぴく動いている。


恥ずかしい時の反応のはずなのに、
彼は私から目を逸らさない。


射抜かれるようなまなざしに
私の方がたじろいでしまう。


先に目を逸らしたのは私だった。


「二年一組」


「えっ?」


「このクラスにいる」


「ええ!?」