読めないあなたに小説を。




「じゃあ、グループごとに分かれて作業を開始してくれ。
 リーダーは材料を取りにくるように」


恵弥くんが前の方に行って材料を受け取りに行く。
戻って来た恵弥くんはみんなにテキパキと指示を出していった。


私は野菜を洗って切る係だった。
水道で野菜を洗い、木の椅子に座って包丁を当てていく。
1人で作業していると、
恵弥くんが私の様子を見にやってきた。


「おい、ちゃんとやってるか」


「うん。もうちょっとでできるよ」


「あーあ。それじゃ皮じゃなくて実を切ってるだろ。貸せ」


私から包丁を奪った恵弥くんは、黙々と手を動かし始めた。
包丁さばきがとても綺麗。
料理が上手いという櫻田さんの情報は
間違っていなかったのか。とても手際がいい。


「お前、櫻田たちとはうまくいってんのか」


「えっ?」


「お前のことやから、馴染めてないんかなと思って」


ゴツゴツしたじゃがいもを手に取り、手早く動かしていく。
その手元を見ながら、私は考えた。


もしかして、心配してくれたのかな。
私の性格を少なからずも分かってくれて、
私が馴染めているかを、考えてくれていたのかもしれない。


やっぱり恵弥くんは優しい。
彼の優しさは、一体どこからくるんだろう。


「あ、あのね。櫻田さんたちが、
 友達になろうって言ってくれたの。
 仲良くやっているから大丈夫だよ」


「そうか。ならええんやけど。
 じゃあ、作業もあいつらと一緒にしてやれば良かったな」


「ううん。1人も好きだし、
 これでいいよ。ありがとう」


「具合はもう、ええか?」


「えっ?」


「顔面蒼白だったし。貧血のこと」


「ああ、大丈夫。恵弥くんからもらったの食べたから」


私も何かしようと、恵弥くんが皮をむいたジャガイモやにんじんを洗う。


2人で作業していると、時間が止まったみたい。
夢に見た、光の粒が見えるような気がして、
気持ちがほっこりした。


周りの喧噪も、遠くに聞こえる。
今は、私と恵弥くんの2人しかこの世界にいないみたい。


今なら、聞けるかな。