読めないあなたに小説を。




恵弥くんに好きな人が?


思いもよらない情報に少しだけ混乱する。
まさか好きな人がいるなんて。


いや、いていいんだけれど、恵弥くんはなんていうか、
1人が好きって感じの人だと思っていたから、
女の子に興味ないはずなんだけど。


「さ、さぁ。話題には出てこなかったから私も分からないの」


「そっかぁ。誰なんだろうなぁ」


「あっ、ねぇ、紫月さんに聞いてきてもらえば?」


「えっ……」


木下さん、突然何を言い出すの?
訳が分からないまま呆然と彼女たちを見つめる。
私を1人取り残したまま、みんなははしゃぎ始めた。


「それナイスアイデア!ね、紫月さん、お願い」


「で、でも私……出来ないよ」


「大丈夫よ。須藤くん、優しいから」


それならば自分たちで聞いてほしい。
私を巻き込まないで。
そう思うのだけれど、なかなかそう言えない自分に腹が立つ。


このままじゃ、本当に恵弥くんに聞かなきゃいけなくなる。
どうしよう……。


「紫月さん、一生のお願い。
 好きな人って誰なのか聞いてきて」


櫻田さんが頭を下げる。
そんなことされたら、断れないじゃない。


「わ、わかった……」


「ほんと?ありがとう!紫月さんって、優しいのね」


満面の笑みを浮かべた彼女は、とても綺麗だった。
その笑顔を見たら、これから待ち受けている不安や恐怖なんて
どこかに吹っ飛んでしまう。


首を縦に振ってよかったのよね。
私、いいことをしたよね?
間違っていないよね?