読めないあなたに小説を。




恋っていうのは、良くも悪くも人を変える。


櫻田さんの恋は、彼女にとって
いい影響を与えているのね。


いいなぁ、私も恋がしたい。


思春期に病気になってしまった私は、
まともな恋は未経験だ。


かっこいいなとか、憧れの対象はそれなりにいたけれど、
その先のことは全く知らない。


世の女子高生みたいに、恋がしたい。
ドラマや映画のように、狂おしいほど誰かを愛してみたい。


でも、病気を抱えた私は、
恋なんて出来ないんだろうな。


だって、病気を理解して受け止めてくれる人なんて、
そうそういないもの。


面倒くさがられるか、一蹴されるかのどっちかだろう。


人を好きになっても、傷ついてしまうし、
逆に傷つけてしまうこともある。


私にとって恋は悪影響しか与えてくれないものだ。


でも、病気がなかったら私も、
彼女たちのように恋の話に花を咲かせることが出来るのかな。


「ねぇ、紫月さん」


1人で考え込んでいると、櫻田さんに話しかけられた。
自分に話を振られるなんて思っていなかったから、
突然のことに固まってしまう。


「ふぇ?」と変な声しか出てこなかった。
女子力のない自分を呪いたい。


「紫月さん、バスで恵弥と話してたよね?
 何を話していたの?」


「あっ……えっと、貧血を心配してくれたの。
 ご飯食べたかって聞かれて」


「ふうん。ね、優しいっしょ?地味でも派手でも、
 中身は変わらずいいやつなんだよね」


櫻田さんが自分の所有物のように自慢げに話す。
私に背を向けて輪を作っていたのに、
いつの間にか私の前に輪が広がっていた。


「でも、恵弥には好きな人がいるみたいなんだよね。
 紫月さん、誰だか知らない?
 そんな話、してなかった?あいつ」