読めないあなたに小説を。




また、あの白い空間にいた。
私は1人で立っている。


すると光が射し込んできて、誰かが光を背にして現れた。
その人は、無数の光の粒を纏っている。


私に向かって手を伸ばすから、その手を取る。
前と同じようにその光の粒が私にも伝染する。
その粒に触ろうとしても、何故か触れない。


不思議に思って粒を追うけれど、
それでも粒は逃げていく。
なんだろう、私には触れないの?


相変わらず、その人の顔は見えない。
「朱莉」と呼ばれている気がする。


返事を返したいのに、声がなかなか出なかった。


もどかしいけれど、気持ちがいい。
ずっとこの世界の中に身を投じていたい。


悪いものも、人も、何もないこの場所で、
生きていたい。


この不思議な人物と私、二人だけでいい。
そういう世界がくればいいのに。


そう思ったのも束の間、光が射し込み、
光の粒が一斉に弾けた。


たちまち光が消えていき、その人もいなくなってしまう。


すぅっと引き戻されるように、目が覚めた。


「おい、起きろ」


「ん……夢……」


目を開けると、バスは動いていなかった。
ざわざわと賑やかな声が聞こえる。


恵弥くんの肩の上だったことを思い出して、急いで体を起こした。


少し涎が出ていて、慌てて拭う。
恵弥くんの肩を汚していないだろうかと確認したら、
大丈夫なようだった。


人の肩で寝て涎を垂らすなんて、女の子としてどうなの?


「着いたで。みんなバス降りるとこや」


「あ、ありがとう。ごめんね、重かったでしょ」


「別に。はよ降りるで」


リュックを手に立ち上がった恵弥くんは
先にバスを降りてしまった。


みんなが次々と降りてしまうから、
その波になんとなく出遅れてしまって、最後にバスを降りた。


恵弥くんを探すと、前の方に赤い髪が揺れているのを見つけた。


今のところ恵弥くん以外の人と話せないから、
恵弥くんのところにいたいのだけれど、これじゃあ無理そう。


仕方ないので一番端に身を小さくして突っ立っていた。