読めないあなたに小説を。




それ以上、恵弥くんは深く聞いて来なかった。
それがなんだか、もどかしいと思う。


私はどうしたいの?知ってほしいの?知られたくないの?
嫌われたくはないけれど、大丈夫?って心配してほしかったのかも。
大変だな、よくなるといいなって、言われたかったのかもしれない。


いっちょ前に心配だけはしてほしいなんて、
私はなんて愚かな人間なんだろうか。


恵弥くんは、私の病気を知ったらどうするのかな。


やっぱり、そんな人面倒だって離れていくのかな。
情けないって呆れてしまうのかな。
口もきいてくれなくなるのかな。
こうして、肩を貸してくれることもなくなるのかな。


そう思うととても怖かったし、胸がざわざわした。
せめて今だけでも、こうして優しさに触れていたい。


「お前、貧血持ちやろ」


「なんで分かるの?」


「俺の親友が貧血やから。
 そいつと同じ行動を取ってんねん」


友達って、男の子かな?


「そうなんだ。同じ行動って、どんな?」


「貧血のくせに飯を食わん。
 そんで顔真っ白にさして倒れる」


「うっ……私は倒れないもん」


「いずれ倒れる。さっきまで顔真っ白やったで」


「ごめんなさい……」


少し他愛のない話をしたからか、
さっきのざわざわした気持ちは影を潜めていた。


もしかしたら、空気を換えるために
話を振ってくれたのかもしれない。
多分、恵弥くんはそういう人。


なんだか顔を見たくなって少しだけ頭を浮かすと、
恵弥くんの手が伸びてきて頭を押さえつけられた。


でも決して乱暴じゃない。
優しい、温かい手で私の目を覆った。


「ほら、会話終了。もう寝ろ」


「うん。おやすみ」


「おやすみ」


返さないだろうなと思いながら「おやすみ」と言うと、
意外にも低い声が返ってきた。


なんだか一緒に寝るみたいで、ドキドキした。


昨日の夜不安すぎて眠れなかったから、
今はこの声があるだけで安心して寝られる気がする。


恵弥くんの手が私の目を包むから、
視界が真っ暗で、そのまま目を閉じるとすぐに、
ふわりと夢の中へと落ちていった。