恵弥くんから話し始めるのは
初めてなんじゃないかな。
突然のことに驚いたけれど、
これも私に心を開いてくれた証拠なのかと思って
嬉しさを感じた。
黙って話始めるのを待っていると、
恵弥くんが息を吸い込んだ。
「お前さぁ、なんかトラウマでもあんの?」
「えっ?」
「前に街で動けなくなっとったやろ。
あれ、なんかあんのかと思て。
始業式の次の日も保健室にいたし、
この間も自分の意見なんも言えんかったやん」
「それは……」
病気になってしまったから。
そう言ったら離れていってしまう。
その恐怖が頭を過り、何も言えなかった。
何か深刻な、例えば恵弥くんのお父さんのような
ガンなんかの体の病気だったらまだ分かるけれど、
精神的な病気なんて情けなくて話せない。
だってこれは、私が弱いからいけないんだもん。
甘えだと思われてしまう。
それで嫌われて話せなくなるのだけは、絶対に嫌だった。
私は、この病気を隠さないといけない。
「も、もともと話すのが苦手なの。
だから自分の意見とかあまり言えなくて。
保健室にいたのはただ具合が悪かったから。
街でだって、ちょっと気分が悪かったから」
「……ふうん。ほんまにそれだけか?」
「うん」
「なら、ええんやけど」


